海外旅行の際のインターネット環境として有名なもののひとつにモバイル Wi-Fi ルーターというものがある。簡単に言うと海外でもインターネットを利用するための小型の持ち運び可能な Wi-Fi ルーターだ。日本の空港に行けば出国エリア近くに店舗があったり、広告などで見たことある人も多いのではないかと思う。
海外でインターネットをする方法としては有名ではあるが、俺はこのモバイル Wi-Fi ルーターのレンタルサービスの利用は全くオススメしない。デメリットが多すぎるのだ。
以下理由を解説する。
モバイル Wi-Fi レンタルは高くつく
一般的にレンタルサービスというのは車にしろ DVD にしろ短期間のみしか利用しないために購入するよりも安価にすむことが特徴である。しかし、海外でインターネットを使いたいという目的に沿うものの中ではモバイル Wi-Fi は安くない。むしろ地域によっては非常に高額になる事も多い。
例えば俺が先日旅行したキルギス共和国を例にしてみよう。
グローバル Wi-Fi では 3G 接続で一日 300M のプランが一日あたり1770円となっている。
海外WiFiレンタルの料金プランのご案内 | 【公式】海外WiFiならグローバルWiFi
ところが現地で購入したプリペイド SIM は SIM 代と通信プラン代合わせて 200KGS(約320円) で LTE が一週間 5GB(実際には昼夜合計 10GB だが、夜間分を使い切るのは現実的ではないため 5GB とする) 使えるプランだ。
キルギス・ビシュケク市内の路上販売で O! のプリペイド SIM を購入した | Lonely Mobiler一々計算するまでもなくプリペイド SIM を購入したほうが圧倒的に安い。二日以上レンタルするなら SIM フリーのアンロック手数料を払ってもおつりが来る。おまけに LTE なので速度も速い。
とはいえキルギス含め中央アジアはモバイル Wi-Fi レンタルサービスにとって不利な場所なので他のところも見てみよう。
日本人に人気のタイをグローバル Wi-Fi で見てみると、LTE 無制限コースが一日あたり2070円, 一日 300MB コースで970円となった。
しかし、自分が先日タイで購入した AIS のプリペイド SIM は LTE が 13GB/8日間使えるプランで1000円程度のものだった。
タイ・ドンムアン空港でAISのプリペイドSIMを購入した | Lonely Mobiler同じプランではない上にタイの場合は頻繁にプランに変更が入るので正確な比較は難しい。が、普通にインターネットを利用するのであればプリペイド SIM を購入したほうが安い事が分かると思う。
もう一つ、行った事は無いがフランスの値段も比較してみよう。
グローバル Wi-Fi では複数のプランを提供しているが、最高値と最低値、真ん中の3つのプランを抜き出してみた。
- LTE 無制限 2370円
- LTE 300MB/日 1270円
- 3G 300MB/日 970円
以下のブログによるとフランスのプリペイド SIM にはこのようなものがあるらしい。
- Orange Holiday 10GB/14日 €39.99(約5000円)
- Welcom Prepaid SIM 5GB/14日 €34.99(約4300円)
- La Carte SIM €3.99 + 1GB/30日 €20.99(約2600円) | 2GB/30日 €30(約3700円)
流石に物価が高いだけある。ざっと比較してみると 1-3日程度の短期旅行ならモバイル Wi-Fi の方が安く、それ以上となると現地プリペイド SIM を購入したほうが安くなるようだ。フランス含めヨーロッパのような遠方へ旅行に行く場合、旅行日程も長くなりがちなので、プリペイド SIM のほうが安い事が多くなるだろう。ちなみにプリペイド SIM にはこれ以外にも様々な種類があり、もっと安いものもある。
このように物価の安い国ではモバイル Wi-Fi を利用する金銭的なメリットは無く、物価の高い国では数日程度の超短期での利用時のみ得かもしれない、という程度だ。CM や広告で見かけるからといって優れたものではないという事がわかる。
また、モバイル Wi-Fi レンタルサービスは一日当たりの料金にプラスして紛失時などの保険代などをオプションで求める場合も多い。オプションなので断る事はできるが、レンタルだと不安になるので追加する人も多いのではないか?
このようにモバイル Wi-Fi ルーターを利用する金銭的なメリットはほぼ無いに等しい。
モバイル Wi-Fi をレンタルすると荷物が増える
これは当たり前のことなのだが、インターネットを行うのにモバイル Wi-Fi ルーターを利用するということは、それを持ち運ばなければいけないという事だ。さらに、Wi-Fi ルーターをレンタルすると本体だけでなく、充電器や充電ケーブルにそれらを収めるケースといった付属品も一緒についてくるため、余計に荷物が増える。
俺のように街歩きの際に鞄も持たず荷物は全てポケットの中に入れる人にとって、インターネットをするためだけにわざわざ Wi-Fi ルーターを持ち運ぶのは邪魔なだけだ。それならプリペイド SIM を購入してスマートフォンのみで通信できたほうが使い勝手が良い。
荷物が増えるということは盗難や紛失の可能性も高まる。ヨーロッパや東南アジアでもスリや強盗の被害にあったという話はよく聞く。そのためにモバイル Wi-Fi ルーターレンタル各社は保険オプションも用意しているが、そこまでお金を払う価値があるのか、よく考えたほうが良い。
レアなケースだが、インドのタージマハルなど場所によってはカバンの持ち込みを制限する施設もある。ルーターはポケットに入るサイズなので持ち込めるとは思うが、ズボンがゴツゴツになって動きにくそうだ。
モバイル Wi-Fi ルーターは使い勝手が悪い
電子機器を利用する際には、利用の際に電源は入ってるか、ちゃんと電波を掴んでいるか、バッテリーの残量は問題無いかなどを気にしないといけない。特にうまく通信できなかったときにはこれら項目を一々確認する必要がある。単純に面倒くさい。
特に嫌なのが充電の手間だ。スマートフォンやカメラなどに加えて充電するべき機器が一つ増えるのは意外と面倒な事だ。コンセントが足りない、USB充電器の口が足りないなんて事もある。そのためにUSBポートが沢山ある充電器やマルチタップなどを利用すると更に荷物が増える。
モバイル Wi-Fi ルーターの代わりにプリペイド SIM を購入しよう
このように海外旅行の際にモバイル Wi-Fi ルーターをレンタルするデメリットは大きい。その代わりにプリペイド SIM カードの購入をオススメする。プリペイド SIM カードの特徴を書いてみよう。
値段が安い
上記モバイルWi-Fiルーターのデメリット欄でも挙げたが、プリペイド SIM カードのメリットはその料金にある。料金は国やキャリア、利用日数にもよるが、殆どの場合はプリペイド SIM カードの方が安くなる。特に長期の旅行や物価の安い国の場合に顕著だ。
日本と同じように利用可能
日本のSIMを渡航先のものに入れ替えるだけなので、日本で利用しているスマートフォンをそのまま海外でも利用できる。モバイルWi-Fiルーターの存在を一切気にする必要がないし、荷物も増え無えず身軽なままだ。
SIM の種類は豊富、複数カ国利用可能なものや Amazon で買えるものも
モバイルWi-Fiルーターのレンタルサービスでは複数国で利用するプランがあるが、プリペイド SIM にも複数の国で利用できるものもある。しかも、日本の Amazon から購入可能だ。
例えばアジア地域では以下の AIS の物が有名だ。
この辺りは詳細な利用方法を書いたブログが沢山出てくるので、初心者でも簡単に利用できると思う。
プリペイド SIM を利用するデメリット
もちろんデメリットもある。
利用しているスマートフォンによっては海外の電波に対応していないこともある。全く通信出来なくなる事は稀だが、LTE が殆ど使えなくてすこし遅いという現象は実際に遭遇した。
出来れば事前に FrequencyCheck で利用しているスマートフォンと現地キャリアの対応表を確かめて見ると良い。
FrequencyCheck - Mobile Network Compatibility Search for Unlocked Phones and Devicesまた、現地の携帯会社を調べておかないと変なキャリアに当たって快適に利用出来ないこともある。概ね日本でいう docomo のような大手キャリアなら殆ど問題無いが、楽天のような新興キャリアは当たり外れが大きい。
とはいえ、モバイルWi-Fiルーターも現地キャリアを利用したローミングサービスを行う以上キャリアの品質に左右されるはずだ。なので通信品質に関しては大手キャリアを利用するのであれば殆ど変わらないのではないかと思う。
プリペイド SIM に関する良くある誤解
俺はモバイル Wi-Fi ルーターのレンタルよりはプリペイド SIM の利用をオススメしているが、プリペイド SIM に関して勘違いしている人も多い。なので良くある誤解について解説しようと思う。
プリペイド SIM は SIM フリーのスマートフォンが無いと使えない?
確かにプリペイド SIM は SIM ロックフリーのスマートフォンでないと利用できないが、今時のスマートフォンは手続きを行う事で SIM ロックを解除できる。なので殆どの人は SIM ロックフリーのスマートフォンを所持してるも同然である。
例えば docomo であれば、My docomo 経由で行えば手数料無料でロック解除できるらしい。
SIMロック解除の手続き | お客様サポート | NTTドコモもし SIM ロック解除の対象外のスマートフォンを所持しているのであれば、それはおそらく非常に古い端末であるので買い替える事をオススメする。
個人的には docomo や au などのキャリアは料金が無駄に高いので MVNO キャリアを利用するのが良いと思う。が、昼間の通信速度が低いとかサポートの質とか欠点もあるのでそのへんは好みで選択すると良い。自分は IIJmio を利用している。
俺が三大キャリア(docomo/au/softbank)を使わずに MVNO を選ぶ理由 | Lonely Mobilerなお MVNO キャリアが販売しているスマートフォンは基本的に SIM ロック解除されているので問題無いはずだが、確認は各自してほしい。
プリペイド SIM は購入や設定するのが大変?
よくプリペイド SIM の欠点に挙げられる購入の手間や設定の煩わしさだが、そのような事を言っている人はプリペイド SIM をろくに使った事がないか、もしくはモバイル Wi-Fi ルーター等の他のものを売りたいがために嘘を言っているかのどちらかだ。
自分の経験からいうと、プリペイドSIMの利用はとても簡単だ。モバイル Wi-Fi をレンタルする手間と変わらないどころか、より楽なところも多い。
海外で購入する場合は言葉が分からなくて不安に思うかもしれないが、空港での購入なら店員は旅行者の対応に慣れており、英語が苦手でも指さしでプランを選んだり、簡単な英単語のみで購入できる。プランを選んだらパスポートと現金とスマホを渡すだけで手続きから設定まで全てやってくれるところが殆どだ。
大抵の国際空港にはこのような SIM 売り場がある。
そうでない場所であっても日本人旅行者の誰かがブログ等で情報を発信している為、それらを見れば困る事は無い。
ただし場所や時間帯によっては空港のカウンターが混んでいる事もあるし、深夜早朝便で SIM 売り場が閉まっている事もある。
そのような場合に備え、Amazon などで事前に購入する手もある。例えば以下のような複数国で利用可能なプリペイド SIM が売っている。
これは IT に疎い母親が海外旅行する際に使ってもらったが、特に問題なく利用できたようだ。
また、中国では現地で SIM を購入すると Twitter や Google などの海外の Web サービスが利用できない。なので以下のように香港などのローミング SIM を Amazon で購入しておくと便利だ。
Twitter や Google も利用可能な中国聯通香港 SIM を中国本土で利用する | Lonely Mobiler複数人で利用出来ない?
良くモバイル Wi-Fi ルーターのメリットに「複数の人と一緒に利用出来る」とあるが、通常スマートフォンにはテザリングと呼ばれるネットワーク共有機能が備わっているため、ルーターと同じ様に利用可能だ。なのでメリットでもなんでもない、騙されてはいけない。
しかし渡航先の利用キャリアによってはテザリングが有料オプションとなっている事もある。自分が確認したのはカザフスタンの Altel とキルギスの O! の二つだが、もしかしたら中央アジアではこのような契約が一般的なのかも知れない。どちらも追加でテザリングオプションの手続きを行うことで利用可能になる。
カザフスタン・アルマトイの街中でプリペイド SIM を購入した | Lonely Mobilerキルギス・ビシュケク市内の路上販売で O! のプリペイド SIM を購入した | Lonely Mobiler
プリペイド SIM 以外の選択肢
自分はプリペイドSIMを好んで利用しているが、ほかにも海外でインターネットを利用する方法はいくつかある。
キャリアの海外ローミングサービス
自分は格安キャリアを利用しているためプリペイド SIM を購入しているが、短期間であれば docomo や au などの海外ローミングサービスを利用するのも良い。
例えば docomo であれば「パケットパック海外オプション」を利用すると一日 980 円でローミングによるデータ通信が行えるようになる。対応する国であればより安いプランもあるが、おおむねモバイル Wi-Fi ルーターと同額かやや安い値段となるようだ。
パケットパック海外オプション | サービス・機能 | NTTドコモなので数日程度の短期旅行であればキャリアのサービスを使うのも有りだ。荷物も増えず使い勝手も損なわず、レンタルする手間も省ける。ただ、プリペイドSIMと比べると高いので渡航期間が長くなるなら止めたほうが良さそうだ。
eSIM
eSIM という SIM がある。SIMカードをソフトウェア化し、端末画面上で複数のキャリアを選択できる規格である。
SIMカード - Wikipedia現段階では対応端末は少なく iPhone XS など一部に限られるが、eSIM を利用すればスマートフォン上のみでキャリアとの契約ができるようになる。
まだ自分でも利用したことないので詳しく無いが、これが流行ればモバイル Wi-Fi ルーターのレンタルどころかプリペイド SIM すら必要なくなるかもしれない。今後の動向に注目したいところだ。
まとめ
このようにモバイル Wi-Fi ルーターは利用する価値が無いに等しい。そんなものは使わずプリペイド SIM を購入しよう。